:2025:02/02/14:14 ++ [PR]
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:2008:02/11/07:39 ++ TK分院
日々気温が上昇している春から夏にかけての時期。
草原の様な広い敷地、背の高い草木はなく、膝くらいまでの青々とした草が風に揺られ打ち寄せる波を思わせる。
かつてそこは飛行場であった。滑走路の跡を辿って行くと、茶褐色に退廃した三階建ての建物が見えてくる。窓枠はさび付き、ガラスは割れて、廃墟に興味のない人でもここが使われていない事を瞬間的に理解する。
侵入防止策をとられた一階の窓は鉄板で塞がれている。その鉄板をこじ開けようとした跡が生々しく残るが、途中で諦めたのか隅は歪んだままになっている。
外階段で2階に上がり、中を覗くと、重厚な造りの木製の扉が目に入る。建物が使用されなくなって数年経つ割には、色褪せる事無く凛とした姿を保っている。
鳥の巣と化したこの分院は、中に入ると様々な鳥と遭遇することになる。それだけ鳥がいるので糞の跡がとてつもない。この糞を避けて通ることはまずできない。
建物中央に構える階段は、踊り場まで上がるとそこから左右に分かれスイッチバックする。踊り場に設けられた窓ガラスから差す光は、剥がれた薄緑の壁の色をより強調させた。
鉄板で塞がれた1階よりも明るい2階に上がると、鳥たちの鳴き声はより多く耳に入る事になる。そして招かざる客に驚き、目の前を鳥たちが飛び交う。
建物の扉や壁は、比較的落ち着いた薄い緑とクリーム色を基調としているが、経年効果で薄汚れ不気味な色にさえ見えてくる。その中で一室、明らかに違った造りの部屋に辿り着く。外階段から見えた、アコーディオンタイプの木製の扉だ。
一室だけ違う造りのこの部屋は、ここの長が使用していた事がわかる。そして、壁に張り付くように高い天井まで届く木製の本棚。窓からの光を受けて、木製品独特のツヤが光る。
残留物は何一つないが、この建物の造りは独特で、長とその部下達の格差がはっきりしている建物であるといえよう。
それもそのはず、分院になる前は戦争で使われていたというのだから。
上下関係と、規律を重んじる兵隊さんは、日常のふとした所にもその格差意識を誇示していた。
:2007:10/01/13:14 ++ 稲取隔離病棟
日本の半島の特色として、街が大規模に栄える事は少ない。
廃墟半島とはよく言ったもので、半島には廃墟が多い。
代表とも言えるのが伊豆半島である。
その中でも最恐と言われる廃墟がここ、稲取隔離病棟。
結核の隔離病棟とされているが、あまりに古い廃墟なのでその真相を知る人は少ない。
膝位まで伸びた藪を進むと木々の向こうに木造の建物が見えてくる。
ガラスはなく、屋根の赤錆が不気味さを増している。
狭い正面玄関を抜けると、受付用の小窓がある。
そこから四角いナースキャップをかぶった戦時中の看護婦が手招きする様な妄想に駆られた。
崩れた廊下を進んで行くと、病室が左手にある。
木枠にはめられたガラスには、外から侵食を試みている植物が、
太陽の光を遮る様にビッシリと貼り付いており室内を暗くさせている。
不自然に置かれた椅子には、死を受け入れらない者達が座り
壁には何人もの顔がこちらの動向を窺っている様に感じてしまう。
そして、その人の顔と思える写真を撮ってしまったのは、単なる偶然なのだろうか。
3棟からなるこの建物の病室は、ほぼ同じ造りになっているが、
崩れ方や植物の侵食により様々な廃墟空間を演出し飽きさせない。
中でも目を引くのは、病室に残されたベットである。
風化するとここまでなってしまうのかというベットの最終型がそこにある。
シーツやバネなど、人の作り出した物は風化と共にほんの少しの残骸を残すだけで、
クッションとして使用されていた藁の塊だけが、ベットの面影を残している。
小高くなった丘の上に第3棟がある。
ここに単身乗り込んだ私は、あまりの大雨と傾斜により、第3棟に行くのを諦めた事があった。
しかし、全て見たいという欲求を満たすために再度やってきた。
大雨と深い木々で暗く見えにくかった第3棟は、晴れた日でも薄暗く大して変わらない。
唯一の救いは足元がぬかるんでいない事だ。
登りやすい場所からその病棟に向かい、建物の中を見たときに目を疑った。
なんと、その病棟の中は竹薮になっており、その竹は床を突きぬけ天井に刺さるほど伸びて
廊下をビッシリと埋め尽くしている。
青い竹や黒く変色した竹が、現実社会とはかけ離れた光景を見せつけていた。
時間の流れを具現化している廃墟は様々な表情を持っている。
時に懐かしみ、時に恐怖を与える。
そして廃墟と言えど、時間の経過は今も進行中であることを、
この建物の敷地に咲いていた生き生きとした紫陽花が改めてそう認識させた。
この廃墟はまだ生きている・・・